2:不完全な僕 12
「あんたって、本当に何も出来ないのよね。」
おかあさんがぼくを見て言うことばは、これだけ。
べつに、ぶたれたり大きい声でおこられたりしない。
ただ、がっかりしたようなちょっとこわい目で見られるだけ。
おかあさんがためいきをするたび、知らない人に体をじろじろ見られるたび、ぼくはぼくじゃなくなっていくような気がする。
「おかあさん、ごめんね、ごめんね。うまれてきて、ごめんなさい。」
ぼくがあやまっても、おかあさんはぼくを見てくれない。
ちょっと前は、ぎゅってして、にこにこして、だいすきよって言ってくれたおかあさん。
また本をよみきかせて、あたまをなでてくれないかなぁ。
「あら、もういらないの?この人形。あなたこの子好きだったじゃない。小学生の時からこの子のお母さんだったんじゃないの?」
「もう、やめてよママ。私もう高校生なのよ。人形遊びなんてやってらんないし、捨てていいよ。」
ぼくのガラスの目にふわふわの体は、おかあさんの子どもとしてはたりなかったみたい
8/31/2024, 10:23:35 AM