ぬるい炭酸と無口な君
僕はあるカフェの店員だ。近くには大学があるが、近くに人気チェーン店のカフェがあるからか、大学生の客は少ない。
逆に楽だからいいかな、も思う。
珍しく若い女性の客が入ってきた。おそらく大学生だろう。
「…ピーチソーダ1つ。」
「はい!かしこまりました!サイズは如何なさいますか?」
「…Lで」
ここに来るのはおしゃべりな老人ばかりだったからか、少し静かな人には慣れない。
女性客にピーチソーダを渡すと、無口で受け取り席に座ってパソコンを開いた。
2時間ほど居座ると、一息ついた様子で帰っていった。
それから、女性客は毎週店に来るようになった。!
頼むのはいつもピーチソーダ。
相変わらず無口なまま数週間が過ぎていった。
何週間か経ったある日、また女性客はピーチサイダーを頼むかと思いきや、今回は珍しくアップルソーダを頼んだ。少し驚いたが、まぁそんな事もあるかと飲み物を作っていた。
「こちらご注文のアップルソーダです。ごゆっくりどうぞ」
お客さんが来ないので店の仕事を済ませていたら、女性客に声をかけられた。
「すみません、これ氷入ってなくないですか。ぬるいんですけど」
「…え!?申し訳ありません!今すぐ作り直します!」
しまった。女性客がいつもと違うのを頼んだことに驚いて気を取られていた。
「…あと、お兄さん。」
「…はい?」
「ハンカチ、落としてますよ」
そういってハンカチを渡す不意な君の笑顔に、僕は心を打ち抜かれた。
8/3/2025, 4:25:42 PM