カラッカラに水分が飛んだ真冬がおわりを告げようと雨が降る日付が多くなってきた。
冬から春に向けて季節が変わってきているんだなと感じて、時間の経過に嬉しくなった。
そんなことを考えながら、窓から雨のにおいを嗅いだ後に窓を閉める。
すると玄関から音が鳴り、愛しい恋人の声が響いてきた。
「ただいま帰りましたー」
当たり前のように玄関の方に向かう。どちらかが帰ってくると出迎えてハグをするのが日課だったからだ。
「おかえり。雨、大丈夫だった?」
「今日は車で行ったから問題ないです!」
彼女を視界に入れた瞬間、ふわりと甘い花の香りが鼻腔をくすぐる。彼女は白と水色の花束を持っていた。
「どうしたの、それ?」
「ああ、これ友達がくれたんです」
彼女の友達に花屋の店長がいるから、ホワイトデーに合わせてくれたのかな?
花束はそこまで大きいものでは無かったけれど、彼女の好みや雰囲気とあっていて……その……凄く可愛いんだ。
「かわいい」
「へ?」
「あ、ああ、いや、花瓶あったっけ?」
「ふふ、買ってきちゃいました!」
彼女は花と花瓶が入っているだろう袋をテーブルに置いてから、俺に振り返る。
そして両手を広げて俺の胸に飛び込んできた。
やっぱり、甘い香りがする。
花の香りと共に彼女の特有の香りが。
おわり
三〇四、花の香りと共に
3/16/2025, 1:05:21 PM