Mey

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朝の昇降口に入る前、
強い向かい風に舞った砂が目に入って痛みに目を瞑った。
目を瞬かせて涙と共に砂を流して俯いた顔を上げたとき、
前を歩いていた君が僕の方を向いていた。
君は追い風を背に受けて、
下ろした髪が顔周りを覆って靡いていた。
逆光に浮かび上がる髪を抑える仕草に暫し見惚れた。
憂いを帯びたその表情が美しいと、
僕が伝えることができたなら。
追い風を受けて君が僕の元へよろめいてくれたら、
僕は君を全力で受け止めに行く。
だけど風は止み、君はくるりと向きを変えて昇降口へ吸い込まれていった。
追い風は向かい風になる。
その逆も然り。
僕や君の身体の向き一つで風向きは変わる。
風は止むこともある。
風に当たらないようにすることもできるけれど、
それは傷つかない代わりに何も生まれない。
何かを生んでみようか。
風上で君を待っていても、君は向きを変えて僕の元へは来ないから。
再び吹いている向かい風を正面から受け止めて、
憂いを帯びたその顔を思い出して、
君がいる教室へ向かった。



追い風

1/7/2025, 11:12:33 PM