夕日色。

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それほど遠くはないけれど。
彼に初めて抱きしめられた日のおはなし。

疲れ切った彼はしゃがみ込んだまま、
声をかける私の腕を無理やり掴んで。
本当は抵抗できたはずなのに、
手を引かれて床に着地した。
勢いのまま胸に飛び込んで来られて、

目の前で生きている大好きな人のあたたかさだとか
都合良く扱われているやるせなさだとか
悩む彼の元凶になっている申し訳なさだとか

様々なことが頭の中を押し寄せて、ふと視界が滲んだ

読み返していた日記から掬い上げた光景のおはなし。

「俺の前では泣いていいよ」とその日彼は言った。
今では、彼のほうが毎日電話の向こうで嗚咽している。

7/17/2022, 1:21:13 PM