なまえのない物語

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ふと、私を追い越していった風につられて顔を上げる。
街の灯りのせいだろうか。
夜空に散らばる星はいくらか霞んで見えた。
空を見あげたのはいつぶりだろう。
小さい頃、山を背に見上げた夜空にも同じ星があったはずなのに、あの時ほど心が震える感覚がない。
あの時ほど、静かな夜ではないからだろうか。
あの時ほど、星が明るくはないからだろうか。
しばらく眺めた後、前に視線を戻す。
ひたすらに、上を向けば月と星以外の明かりのないあの場所が恋しい。
視界から溢れるほどの夜空が見たい。
さて、父母への土産は何がいいだろうか。

《星が溢れる》

3/16/2026, 9:30:11 AM