鶴づれ

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最初から決まってた


「あのね、うちの子、勉強がすごく得意でね、テストではいつも十位以内に入るくらいなのよ」
「うちの子はね、将来医者になるのよ」
「レールを敷いてる…?嫌だわ、私はあの子にいい暮らしをしてほしいだけよ」

 親戚が集まると、両親の周りでは大抵このような話になる。うちの子、というのは俺のことだ。

 そして、この話題の後は必ず親戚に囲まれて、真面目な顔で説教される。

「あんた、家で息苦しくないの?」
「親の敷いたレールで満足しちゃあいかんぞ。世界は広いんだ」
「最初から何もかも決まってる人生なんて、つまらないだろう」

 こうなると、俺が親に言われて医者を目指しているという前提で話は続いていく。親に逆らい、医者以外の進路を選ぶ方が評価される。

 ふざけるな、とよく思う。

 確かに、うちの親は歪んでいて、子どもは親の飾りだと思っている。それは子どもを縛ることであり、それに苦しんでいる人がいることも分かる。

 でも、俺は本当に医者になりたいんだ。
 勉強だって、好きでやってる。今通っている中高一貫校だって、親が望んだところでもあるが、自分も望んだ学校だ。俺はこのまま、医者になるために突っ走って行くんだ。

 最初から決まってた道が、俺の進みたい方向とぴったり合っていた。ただ、それだけなのに。

8/7/2023, 11:57:42 AM