非常にまずいことになった。
あと数時間で訪れるだろう脅威に私は焦っていた。
先程まで穏やかだった心臓が、今は絶えず脈動している。
「うわ〜何?頭抱えてる。面白。」
私の深刻な様子を見ても、我関せず話しかける人物。
そんなの1人しかいない。親友の莉奈だ。
「うう…日本史の小テスト、今日だって忘れてた…!」
「あーあ。やっちゃったねー」
私は日本史の授業は常に寝ていて、ノートには文字1つ書き込まない最悪の生徒だった。
そんな状況を分かっていて、莉奈は恐ろしい交渉をする。
「貸してください莉奈様!って懇願すればノート貸すけど?」
「うわあ、もうこの際ネタにされてもいい!ありがたくお借りします莉奈様!」
「こうも素直だと面白くないなぁ…ちなみに範囲はp150〜160ね。」
普段は私をおちょくってばかりの存在が、まさかこの危機的状況を照らす一筋の光になるなんて…しみじみ思いつつ、私はノートを借りた。
***
「…よし。10ページ分の暗記終わり!どんな問題でもかかってこい!」
お昼休みを返上し、ひたすら暗記に努めた私だ。
これなら満点も夢じゃない。
私は期待とともに、日本史の先生が来るのを待つ。
ドアの開く音。
「はーい日本史の授業始めますよー。まずはp160〜p170の小テストから。はい、プリント後ろに回してー」
は?
範囲が全く違う。
全身が冷たくなる感覚。
一筋の光なんてとんでもない。
私が掴んだのは…
親友の方を振り向く。
「間違えた範囲教えちゃった。てへぺろ。」
そう言わんばかりの表情に、私はどんな顔をすれば良いか分からなかった。
11/5/2023, 12:44:31 PM