かのこ

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『空が泣く』2023.09.16


 葬式に出た。
 三十二歳という若さでこの世を去った友人の葬式だ。心臓の病気らしい。そんな気配はまったく無かったので、急死ということらしい。
 ネットやら他の友人からの連絡で知ったのだが、それをオレは信じなかった。だから、彼に連絡をした。
 電話も出ない。メッセージアプリも既読にならない。
 彼が最近ハマっているという麻雀をしているのだと思った。
 しかし、翌日になって改めて彼が死んだとの報告を受けた。通夜と葬式の連絡を受け、実感のないまま参列した。
 棺に眠る彼を見た時、眠っているのかと思った。
 他の仲間たちも信じられないと言った顔をして、彼に話しかけていた。
「なに寝てるんすか、どうしたんすか」
 大きな身体の後輩が顔をくしゃくしゃにしている。誰よりも繊細な後輩は、べしょべしょと号泣していた。
「アナタ、来週の旅行はどうするんですか」
 普段は派手な紫色をしている友達も、今日は髪を黒にして参列している。彼と紫の友達は気難しい性格同士、気が合うらしく、よく遊びに出かけていた。来週も、二人で熱海へ旅行に行くのだと、嬉しそうに語っていた。
 オレも彼の棺に歩み寄る。本当に眠っているように見える彼に、ぎゅうっと胸を締め付けられた。
 ボロボロと涙が止まらない。悲しい苦しい。
 こんなオレを彼が見たら、「なに泣いてんの」と笑いながら言うことだろう。
「あほ」
 そんな小さなつぶやきが口をついた。
 全てが終わり、棺が閉じられる。オレたちが送った花に埋もれた彼は、やはり眠っているようにしか見えなかった。
 葬祭場の外に出て、あんなに晴れていた空から大粒の雨が落ちている。
 それはオレたちの涙か、はたまたま若い彼を悼んで空が泣いているのか。
 誰も知らない。

9/16/2023, 11:46:40 AM