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 店を閉め、後片づけを終えた店の主たちはやっと家に帰れると店の灯りを落としだす。
 ひとつ、またひとつ。建物が影をひそめていく。
 街の灯りを消す音がここまで聞こえてきそう。あんなにきらびやかだった街が寝静まっていくこの瞬間が私は好き。
「最後の灯りが…」
ろうそくのように次第に灯りが小さくなり、やがて消えた。
「真っ暗だね」
 目が慣れていたため彼の言う真っ暗という程でもなかった。なんとなく青が混ざっているような黒。街から遠くない海のさざ波が聞こえてきた、気がする。
「そろそろ寝ないと。おいで」
 彼が言っていた「真っ暗」は街のことじゃなかった。
 かなり遅い時間、『ミッドナイト』ブルーに染まった街を眺め終えた私は、声を頼りに部屋の中、彼を探すのだった。

1/26/2023, 10:35:26 PM