「冬になったらなにしたい?」
そう目の前の白銀の少女に問われた。ナイフを膝に置き、剥きかけのリンゴから酷くこじんまりとした病室のベッドに視線を移す。
「それは......季節的な意味か?」
「いいや、私になったらという意味で」
ややこしい聞き方だが、突拍子も無い話が始まったことだけはわかった。
ほんの少し頭を働かせてみる。目の前の少女は、一見して美の女神のような美貌を持ち合わせ、その頭脳も常人の遥か上を行く。
ただ1つだけ言うのなら全てにおいて小さいことだ。身長も僕の頭一つ下であるし、胸もない。そのやることなすことはクソガキのそれだ。
「お前がやってるようなイタズラをしてみたいとは思うな。あれほどの滅茶をできるもんなら相当なストレス解消にはなりそうだ」
「そう......」
淡白な返事だけが帰ってくる。憂いた目は一体どこに向いているのか俺には想像できない。
「でももう私にそんなことは出来そうにない。体はボロボロあれほど満ちていた探検心も空っぽになりかけてる」
深刻そうな面持ちで話が始まった。少女の目が朱塗りに染った窓へと向かった。
「きっと、私の命はあの葉1枚の命しかない」
言いたいことは色々ある。ただ敢えて一言いうなら。
「いやお前拾い食いして食中毒なだけだろ」
11/17/2024, 4:55:52 PM