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はなればなれ

 昔は、芝居や講談、浪曲で有名だった国定忠治という大親分がいた。要するに、今でいうヤクザさんで、博打や侠客として名を馳せていたのだから自慢できた話ではないが、人情家で子分思い、天保の大飢饉のときには私財をなげうって人々を救ったと言われている。
 その一派が、赤城山まで官憲に追い詰められ、ついに最後のとき、忠治が子分たちに言ったのだ。
 縄張りや国も捨てて、赤城の山とも、お前たちとも、今夜がはなればなれになる門出となる。お前たちも頑張れよ!この刀が(と、愛用の刀に)俺の生涯の相棒だった!
という内容のセリフを言うくだりは、芝居でも講談でも、たまに映画で描かれても、大喝采の山場だったという。
 群馬の人々には自慢の大親分で、静岡の清水次郎長と一二を争っていたらしい。 
 ただ、時代も時代、今はヤクザさんを称賛するのもねぇ、という流れで、人々の心からも、もう、はなればなれになってしまっているのはしょうがない。

11/17/2024, 7:05:00 AM