Open App

逆さまの振り子時計がいつもと同じ速さで時を刻んでいる。
団らんを賑わせていたテレビは、いつの間にか反射した部屋を映していた。体を温めていたこたつも、こうやって眠るだけならその余熱だけで十分だと感じる。

時計の針がてっぺんを差したとき、20歳の誕生日の終わりと同時に、20歳の人生の始まりを告げる。

ついこの間、俺が一人暮らしを始めるまでは当たり前だった家族で囲む食卓の途中、
「お父さん、あなたとやっとお酒が飲めるって楽しみにしてたのよ」
と母は静かに告げた。照れ隠しだろうか、いつもより少し上機嫌に見える父を見つめながら。

俺の実家は商店街の一角にある小さな商店を営んでいる。昔より寂れてしまったが、それでも地元の客がそこそこ訪れる店だ。
小さい頃は当たり前のように店を継ぐものだと思っていた。今考えてみるとあの頃の俺は純粋に、いつまでもこの店が存在すると思っていたんだ。

「俺、大きくなったらもっと大きくて、もっとたくさんお客さんが来る店にしてみせる」
そう疑いもせず言っていたっけ。
あの時父は嬉しさが混じっていながらも、真剣な面持ちで
「悠真、お前はお前のしたいことをすればいい。」
と言っていた。

大人になったと言ってもまだ1日目。まだ数分後の自分に答えは出せそうにない。正しい答えかどうかはわからないけど、この約束と呼べるかもわからないただの思い出が、今でもずっと胸に残って離れなかった。


お題:ささやかな約束

11/14/2025, 10:31:09 PM