たぬたぬちゃがま

Open App

ぼたぼたとアイスクリームが溢れる。
「無理して下のコーヒーゼリー食べようとするから。」
くすくすと笑いながらパフェの周りを拭くようにポケットティッシュが渡される。
「食べたかったんだよ。」
「子供じゃあるまいし。」
くすくすといつまでも笑う彼女。なんだか悔しくて、ぐあっと大きな口でアイスとコーヒーゼリーをかき込む。
うまい。コーヒーゼリーは日本発祥らしいが、なぜ海外では誰も思いつかなかったのか。特にアイスクリームとコーヒーゼリーの組み合わせがお気に入りだった。
「本当に美味しそうに食べるね。」
見てるだけで幸せになれるよ。嫌味など一切ない心からの言葉に聞こえた。少食な彼女は曰く、大量に食べる俺に惚れたという。
「ほら、またこぼれたよ。」
そう言って口元についたクリームを拭いてくれる。それをしてもらうためだよ、というのは黙っておく。
「ひとくち食うか?」
「ありがとう。」
そう言って小さな口が可愛く開いたのを、俺は特等席から眺めていた。


【こぼれたアイスクリーム】

8/12/2025, 9:50:06 AM