ブランコを漕ぐとどうしてもにやけてしまう。
あの子は今頃裸足だろうか。目の前にある靴がもしあの子のものなら……困ったな。僕はあいにく袋を持ち合わせてはいなかった。でも少し使わせてもらおう。
僕はその靴を持ってすぐそこの公園に向かった。そこには少し小ぶりなブランコがある。僕は持ってきた靴をブランコのちょうど真下に置いた。
靴には持ち主の姿が投影される。靴は自身の上に持ち主の存在を示すものである。今、僕がブランコに座る時、自身が靴の持ち主の投影と重複することになる。まるで相同染色体のように、その姿たちは折り重なって一つの存在を作り出せる。
しかし僕は躊躇ってしまった。僕の世界にあの子を巻き込むのはやめよう、そう思ってしまった。そうこうしてるうちに、裸足でほっつき歩いている一人の少女を見た。どうしたのと聞くと、友だちとの遊びの際に靴を隠されそのままなのだと言う。僕が持っていた靴を差し出すと、少女はこれだと言って笑顔で受け取り会釈した。僕は少女の後ろ姿に手を振った。
僕はまたあの子の靴を探しに歩き出した。
2/1/2023, 10:20:14 AM