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寒空の下、急足で山に登る。
足元が暗いため時々転びそうになりながらも、スピードは緩めない。
(急がないと・・・、間に合わない・・・)
息がかなり上がっている。
吸い込む空気があまりに冷たく、呼吸しにくい。肺が凍りそうだ。
(行かないと・・・。アレを観るためにも!)

息も絶え絶えでようやく頂上に辿り着く。
急いで時計を確認した。
23時59分30秒
(ま、間に合った!)
荷物を下ろして、その場で大の字に寝る。
時計をかざし、その時を待つ。
「・・・3、2、1、0!」
時計を下ろし、空を見る。
瞬間、キラッと1つ光が流れたと思ったら、その後次々に星が流れ始めた。
「・・・っ!」
声にならない声が漏れる。

『ミッドナイト流星群』

文字通り、ミッドナイトーーー午前0時丁度に現れる流星群のことで、数十年に一度の確率、日本ではっきり見られるのは更に低い確率のまさに奇跡の天体ショーだ。
周りに光がない空一面に次々注がれる星。
星の川の中ーーーまるで異世界に来たようだ。

しばらくショーを楽しでいたが、ここにきた目的を思い出して身体を起こす。
そして、空に向かって手を合わせて祈る。
ミッドナイト流星群は、通常の流れ星よりも願い事が叶いやすいと噂になっている。ただし、誰もいないところで一人で願うことと。
もちろん証拠なんてない。でも、ただでさえ珍しい流星群の更に確率の低い現象。
特別な力があるように感じてしまうのが人間だ。
「・・・・・・」
様々な願いが浮かんでくる。
一緒に暮らしている家族のこと、自分のこと、友人のこと・・・
そして、
「どうか、天にいる貴女が淋しくありませんように」
叶うかどうかもわからない、叶ったかどうかも確かめられない、そもそも願いの前提からして不確かだ。
でも、それが今一番強い願いだった。
願いを言い終えて再び空を見る。
いまだに流れ続ける星達。
その時、一際強い光を帯びた星が流れる。
偶然かもしれない、でも、自分には、まるで願いに対する返答のように思えてならなかった。
どうか、どうかこの願い聞き届けてください。
今日と明日の狭間に流れる星達の奇跡の力を信じてーーー

          『ミッドナイト流星群』

1/26/2026, 4:46:22 PM