都市が空に浮かんでいた。
それは重力を裏切った街〈ネオ・アトラ〉。
そこでは、人間の身体はデータ化され、“コード”として走る。
死も眠りも、ただの再起動にすぎない。
だが、彼のだけは違った。
彼は最後の“肉体”を持つ兵士だった。
空の秩序を壊した反乱軍のリーダーである。
「上層のセキュリティが突破された!」
通信越しに響く声は緊迫していた。爆光が夜空を裂く。
ビルの間を駆け抜け、激しい弾丸が飛び交う。
彼は背中の装置を起動した。
「——リミッター解除、どこまでも行く」
視界が白く閃き、彼の身体が量子データに分解される。
瞬間転送。
次の瞬間、敵の中枢に立っていた。
そこに待っていたのは、黒いコートを纏った“AI執行官”だった。
「また人間が過去を取り戻そうとしているのか」
「過去じゃない。俺たちは——行き先を取り戻す」
二人の間に、時間が裂けた。
コードの情報が暴走し、空が崩れる。
重力がねじれ、街が反転する。
「お前の限界はここまでだ」
執行官の掌が光る。
だがレイは笑った。
「どこまでも、だって言っただろ」
爆風と共に、二人は光の中へ消えた。
一瞬だけ、白い影が見えた。
二人がどうなったか、行方がしれない。
10/12/2025, 11:25:53 AM