私とあの子は、毎日一緒にいる。
小学校に入っての初めての友達で、誰よりも付き合いの長い親友、だから。
学校でいつも一緒にいるのは当たり前。友達の中で一番、仲がいい。喧嘩なんて、一回もしたことがない。
それは高校に入った今でも続く関係。
私たちは当然のように同じ高校を受験して、同じ科目をとって、移動教室の時は、別グループで話していようと真っ先に集合して、二人になる。
磁石みたいだよねー、二人って。グループのみんなは言う。
どっちも絶対に裏切らないよね〜、まさに二人ぼっちってカンジ?って。
そう、私たちはいつも二人。二人ぼっち。
「じゃあ、また明日ね」
「うん、また明日」
あの子の家の前で、いつものように挨拶して、いつものように鍵の音を聞きながら、背を向ける。
一人で歩き出す。明日、あの子と一緒に行かなきゃいけない教科ってあったっけなーとか考えて…ふと、思う。
そういや、私今日、あの子と何喋ってたんだっけ?
…なに喋ったんだっけ?全然出てこない。……そもそも、最近あの子とどんな風に帰ってた?
なにも出てこない。当たり前だ。ここ最近、あの子と喋った記憶がない。
私たちはただなんとなく集まって、一緒に歩いただけ。
私、その時普通になに考えてた?あの子のこと、考えたっけ?
……思い出せない
グループのみんなと、私とあの子の話をしてた時の、会話の続きを思い出す。
「二人ぼっち!!なにそれ、ぴったりじゃん!」
「いいな!私も二人ぼっち欲し〜」
「…ん?ちょっと待って、それ、なんか言葉の使い方、おかしくない?」
「出たよ国語オタク」
「え、どっか引っ掛かるとこある?」
「ああ、うん、えっと…“ぼっち”ってさ、“ひとりぼっち”とかって使うじゃん?」
「うんうん」
「その時の“ぼっち”ってさ、寂しいひとりってのを強調するために使うじゃん?“ぼっち”単体もそういう意味だし?」
「まー確かに」
「なんとなく分かるわ」
「だからさ、“ぼっち”がそういう意味なんだったらさ」
「二人“ぼっち”って二人なのに寂しいって意味になんない?」
…あの時、みんなはなんて答えたんだっけ?
でも、今の、確かにさっきの“二人ぼっち”って感じじゃない?
二人でいたけど、私は何も考えてなかった。一人で帰るのと変わんない。二人だけど、一人。二人ぼっち。
胸の奥から、カルキ水みたいな切なさが込み上げる。
寂寥感、っていうんだよ。お節介な脳が囁く。
二人だけど、一人。二人だけど、寂しい。
…そっか、私たち、二人ぼっちだったんだ。
冷たい風が、私を追い越して行った。
3/21/2024, 12:16:02 PM