いしか

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始まりはいつも突然……。


なんて、使い倒された言葉を使っても、伝わることなんてなんにもない。

けれど、君が来たから僕は今君と居るんだ。

「にゃ~」
「こむぎ〜!!今日も可愛いなー」

こむぎとは僕が拾った猫の名前だ。
拾ったといっても、もともとは地域猫だったこむぎがある日僕の家の前で倒れていた。
こむぎは女の子で、サビ猫だった。

最初はもう手遅れになってしまったか?と思い近づくと、僅かにまだお腹が動いていたため、僕は優しくこむぎを抱いて、急いで動物病院へと向かった。

今もお世話になっている動物病院に辿り着くと優先的にすぐこむぎは獣医さんに診てもらえた。あと少し遅かったから、こむぎは死んでいたと、獣医さんに知らされた。間に合ってよかったと思う。

そんな事もあり、僕はこむぎと暮らすことになった。動物病院に少し入院していたこむぎは初めこそ僕の家に慣れずソワソワしていたが、今では「ここは私の城」と言わんばかりの落ち着きようである。

「元気になって良かったな、こむぎ」
「にゃ〜ん」
こむぎはソファに座っていた僕の膝に乗ってきて撫でて、と言わんばかりに見つめてきた。
望み通りに撫でてあげるとゴロゴロ喉を気持ちよさそうに鳴らす。

「こむぎ、僕はね、僕が人生で猫と暮らすなんて思ってもなかったんだよ。やっぱり生き物と暮らすっていうのは責任が伴うから。僕にはまだ、自信なんてなかったから、いつも見ているだけだったんだけど、こむぎが来てからあれよあれよという間に、僕は君と暮らしてる。


案外出来るみたいだよ。僕は(笑)」

「にゃ~ん?」

こむぎ、君が来てから、何だか前より優しくなれた、気がする。のんびりできるようになった気がする。

始まりは突然だったけれど、僕は、こむぎ、
君と出会えて本当に良かった。

10/20/2023, 9:45:15 PM