未来への船
子供の頃、
君と作った笹舟。
どこまでも流れていく笹舟は、
未来への船…だって、
君も、俺も、そう信じてた。
小さい頃は、
泣き虫だった君だけど、
今ではすっかり大人になって。
それでも、君の笑顔は、
大人になっても変わらない。
子供の頃は、
いつも俺の背中に隠れてた、
少しだけ人見知りな君も、
今では仲間に囲まれて、
楽しそうに笑ってる。
大人になった君の隣には、
俺の知らない人がいて、
君に優しく微笑みかける。
そして君は、その彼に、
少し照れた顔で、
微笑み返すんだ。
子供の頃のままの関係では、
居られない。
分かってた筈なのに、
君の隣に立てないことが、
こんなに辛いなんて、
想いもしなかった。
だから、俺は
想い出の場所を訪れる。
隣に君はいないけれど、
川も森も空も、
独りぼっちになった俺を
優しく迎えてくれた。
笹の葉を手に取る。
出来上がったのは、
幼い頃にたくさん作った笹舟。
大人になった今でも、
作り方は、手が覚えてた。
そっと笹舟を流す。
君との懐かしい想い出に、
叶わなかった恋の欠片と、
この胸の痛みを乗せて。
きっと、この笹舟も、
未来への船、なんだから。
5/11/2025, 6:18:10 PM