手のひらの贈り物
冬の午後の、頼りない光。
ソファに座っていると、クロが足元にやってきた。
そっと差し出した私の手のひらに、
クロは迷わず、その温かいあごを預ける。
ただそれだけのことが、
遠くの国の誰かからの手紙よりも、
ずっと昔に失くした宝物よりも、
今の私を静かに満たしてくれる。
手のひらに伝わる、ささやかな鼓動と体温。
世界はたぶん、こういう小さな贈り物で、
優しく包み込まれているのだろう。
「いい子だね」
呟いた声は、そのまま光の中に溶けていった。
12/19/2025, 1:04:14 PM