ひとつぶ

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出口も何も無い部屋で座り込んでいた。
四方を壁に囲まれた、誰も居ない真っ白な部屋。
それが僕の普通だった。外の世界が気にならない訳ではないけれど、僕には無縁だからどうでも良かった。 どうせここから出られないのなら、希望も挑戦も全て無駄だと思っていた

部屋の外から僕に呼び掛ける君の声を聞くまでは。

僕は自分で君のどこに惹かれたのか分からない。君の嘘も本当もぐちゃぐちゃに混ぜた話が好きだったのかもしれないし、内側から出ようともしないこんな僕を見つけてくれたところが好きなのかもしれない。
君は、僕に意思を与えてくれたんだ。

僕はこの壁の向こう側の『青い空』が見たくなった。

僕は壁を叩き続ける。
叩いて叩いて、それでも傷一つ付かない壁を恨みながらまた叩く。限界も、満足も、僕が決めた。この天井も、この壁も、僕が作った。自分で自分を型にはめて決めつけていたんだ。閉じこもって、僕の知らない新しい外へ飛び出すのを恐れてたんだ。

僕は君の教えてくれた『青い空』が見たい。 壁を破って挑戦したい。無駄でもいい、失敗してもいい、ただただ心の動く方へ身体を動かしたい。

遠くの空へ思いを馳せる。
君の声が纏う、どこか暖かい空気が流れて来た気がした。



#遠くの空へ

4/12/2023, 9:25:44 PM