足り過ぎた贅肉

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先程、娘を配達に送り出したところだ。赤い頭巾が見えなくなるまで見送った。この瞬間の不安は慣れはしない。

しかしそんな事で止まっている訳にはいかない。いろいろと家事があるのだから。
朝食の皿を片付けてから村の井戸に水を汲みに向かう。
井戸には先客が居て水桶を井戸から引き上げている最中だ。

村外れに住んで居る猟師さんだ。軽く挨拶をしつつ順番を待つ。猟師さんが水を樽に移しながら話しかけてきた。

娘さんは今日も配達に行ったのかい?ここらはまだ大丈夫だろうが2つ向こうの岩山でオオカミが居着いてしまったらしいんだ。そっちに居る猟師仲間がまだ若い群れだと言っていたからこっちまで来ることは無いだろうが、森に行く娘さんに何か鈴でも持たせてやりな。
そう話しているうちに樽は満水になったようで、猟師さんから水桶を貰い井戸に落とす。
猟師さんは勢い良く樽を担いで帰って行った。

オオカミ…そんな話を聞いたらまた不安が込み上げてきた。

慣れた手付きで水桶を引き上げ自分の樽に移し、また水桶を井戸に落とす。何度かそれを繰り返し樽に入れていく。
まるで不安が注がれているようにも思えてくる。
もう少しで樽はいっぱいになる。
だが突然、水桶を繋ぐ縄が切れ、水桶は井戸の深くに沈んで行った。どうしようもないその光景に何も出来ずただ井戸の暗がりを覗き込んだ。
娘が向かった森の方を見る。普段より暗く感じた森に無事を祈りつつ樽もその場に置いて猟師の家へ走りだした。
(もう一つの物語)

赤ずきんちゃんのオマージュ、母親目線
昨日の物語のもう一つの物語。

10/29/2024, 1:47:02 PM