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足音


人の性格って意外と足音に出るんだよなぁ。
カカトで歩くように歩く人はカツカツ音を鳴らし
全体重かけてドスドスと足音を立ててくる人もいる。

ここに居るんだぞ、なんてそこまで主張しなくていいと思うのに寂しがり屋なのかしら。

階段脇の私の座席は2階の螺旋階段の通り道。

吹き抜けの風は一階の冷たいエアコン風と3階の暑い空気に挟まれてちょうど私の所で面白い程に立ち止まった。
人の気持ちも似たようなもの。みんな2階に何故持ってくるんだろうね。

一階で起こしたいざこざを2階に持ってきては置いていく。愚痴を吐けばスッキリしてしまうある意味とても幸せな足音は帰る頃には涼やかに足音を高らかに鳴らしながら去っていった。

生温い空気の蔓延した2階で、ぼんやりとしながら机と向き合う。聞かず言わざる見ざるの精神は常に抜き足差し足忍び足。音を立てずに消して漏らさずに、忍びの心で耐えるのみ。

誰一人として2階では我人生はここにあり!なんて言わんばかりに足音を立てる人が居ないのは、やはり性格を表しているのだろうか。ため息をそっと心の中で吐いた。

タン

両足をわざと音を立てて立ち上がる。
振り返る目にニコリと笑い『ジュース買ってきます』と席を立つ。まとわりつくぬるい風には換気が必要だ。

立ち上がった爪先から歩き出した足は音もなく階段を降りる。音もなく降りたらそのまま自動販売機の前に歩くとわざと音を立てて小銭を入れてみた。
カチャリカチャリカチャリ、ピコ、ガタン。

当たり前に響く音に笑みが溢れる。
そんなに主張しなくてもちゃんと買いに来たんだよ。

プルタブを開けてグイッと飲み干した炭酸は生温くなった気持ちも一緒にシュワシュワと消していった。
冷たさが、甘さと爽快が渇いた心と喉を潤した。

さぁ、気合いを入れ直しましょう。

意識して今度は螺旋階段を音を立てて戻ってみようか。
ちゃんと頑張る、ここに居る私を証明する為に。

8/19/2025, 7:13:10 AM