俺は弟に比べて出来が悪かった。
両親は結果主義の人間で、俺はあっという間に弟に全てを奪われることになった。
お菓子に始まって、おもちゃも、お小遣いも、弟が生まれてからは全部弟のもの。
果てには、友人も、恋人さえ弟に取られた。
不出来というだけで忌まわしいのに、弟に負ける兄なんて、両親にとっては論外だったようだ。
俺は、実物どころか、存在さえも弟に取られた。
家では空気のような扱いで、食事だって一人だけ別、簡素なおにぎり1つで終わる。
足りない分は、必死にバイトを掛け持ちして稼いだ自分の金で補った。
両親が弟を褒める度、弟のものが増える度、俺はどんどん惨めになる。
そんな俺にも、唯一、たった一つだけ残されたものがあった。
まだおむつを履いていたような頃から一緒の親友。
彼だけは、俺の元から離れなかった。
家に来る度弟に愛想を振りまかれても、弟との出来の違いを見せつけられても、弟になびかずずっと俺を選んでくれた。
彼が最後の砦と言っても過言ではない。
彼まで奪われたら、俺にはもう何もない。
学も、能も、顔も声も愛嬌も、全部弟に負けている。
そんな自分がコンプレックスで、ある日彼に聞いたことがあった。
なぜ俺を選んでくれるのか、と。
彼はしばしきょとんとして、それから心底おかしそうに笑った。
彼は俺の頬に手を添えて、そっと撫でて口を開いた。
「僕は別に、出来のいい便利な友達が欲しいんじゃないよ。ちょっと不器用で、ドジで、素直じゃない君がいいの。」
キザなセリフだと顔を背けたが、赤くなった耳は隠せない。
俺の唯一にとって、俺もまた唯一だったらしい。
彼は、彼だけは、弟に取られるのを怖がらなくていい。
そう、思うことができた。
テーマ:1つだけ
4/4/2026, 8:42:12 AM