ところにより 雨
天気予報士が泣いていた。
「ところにより雨です」
この人が泣いているから
雨が降るのかもしれない、そう思った。
数年前のパンデミックをきっかけに家から出ない生活が長くなっていた。今日も午前のオンラインミーティングさえ終われば小一時間で仕事が片付いてしまう。優秀なわけでもなく、効率がいい人間であるから、日常も効率的になってしまった。
あるより、ない方が楽。したいより、しない方が静か。そんな直感から、心も大きく動かなくなり、動かし方もわからなくなった。
そもそも心は動かそうと思って動かすものじゃなかったんだ、ということに気がついたのは今朝だった。朝食を食べながらXをなんとなく眺めていた時だった。
天気予報士が泣いていた。
たったそれだけのことに、目を止め、息を飲んだ。
しばらくして鼓動が跳ねていることに驚き、鏡を見に行った。
今どんな顔をしているのだろうか。
記憶の中の自分との間違い探しは考える必要もないほどだった。まるで顔の必需品みたいに目の下にはクマがある。
口角に手を当て、ニコッと笑わせてみるが失敗した福笑いのようなぎこちなさだった。
なぜあの予報士は泣いていたんだろう。考えても仕方のないことに時間を使ったのは久しぶりだった。
撫でた顎の無精髭に一本、白髪が混ざっていた。
3/24/2026, 10:09:14 PM