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 退屈だったので、箱庭を作った。

 土台に土を敷き詰めて、植物を植え、水を流し、温度調整のライトも設置し準備は万端。

 最後の仕上げに、たくさんの生き物を作って箱庭に放った。もちろん、人に似せた生き物たちも忘れない。

 しばらく観察していると、生き物たちはおのおの好き勝手に行動を始めた。

 人に似せた生き物たちは、複数体が集まり、コミュニティのようなものを形成する。

「やっぱりそうなるかぁ……おや?」

 そこに一体、ほかとは違う行動をしている個体が見えた。

 その個体、彼だか彼女だかは、何を思ったか、コミュニティを自ら飛び出したようだった。
 
 そして川(のように流した水)を泳ぎ、山(のように積んだ土)を踏み越え、海(のように注いだ真水)を手製のボートで渡った。

 まさに冒険。映画にも劣らない大スペクタクル。サイズは小さいけど。

 その姿を固唾を飲んで見守っていると、彼だか彼女だかは、ついに。

 箱庭のガラスケースの壁、つまりは『この世界の終わり』までたどり着いた。

 さて、たどり着いた瞬間、彼だか彼女だかは、なんと叫んだだろうか。

「まさか、この世界は箱庭だったなんて……」
 という絶望の声だったか。

 それとも、
「ついに私は! この世界の端まで到達できたのだ!」
 という歓喜の声だったか。

 ……結局声が小さくて聞こえなかったので、それは
 『神のみぞ知る』
 ということにしておこう。



『この世界は』

1/15/2024, 1:35:39 PM