〈平穏な日常〉
切望している。喉から手どころか、全身出る程に。
多感な学生時代は、それこそ波乱万丈で、奇々怪々な人生を欲していたものだが。「私は他の奴らとは違う」と信じて疑わず、柄にもなく主人公へ想望していたのだ。
大概大人というのはきっと、自分が特別ではないと悟った瞬間に始まってしまう。それは諦念でもあり、踏ん切りでもある。
若かりし感情を懐かしく思える程には私も歳を重ねた。
思えば昔も今も波乱万丈であった気はする、私が望むような形ではなかっただけで。そんなに良いものでもないんだな。
今日は布団から出ず安寧を欲している。月並みの平穏なんぞ、今時世、それを手に入れられる方がきっと特別なのだ。
青臭かった私よ、奇しくも願いは叶っている。
そのおかげで、今にも潰れそうだ。
3/11/2024, 1:42:23 PM