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言葉はいらない、ただ…
胸を焦がし、
思考さえもままならなくさせるこの感情は一体なんだろう?
ずっとそう思っていた。
隣にいると、その顔を見たくてたまらない。
近くに座るとその体温は心地がいいのに、
同時に私を落ち着かなくさせる。
遠くにいるときなって目で追いかけて。
自分では無い誰かとキスをしそうな距離にいると
胸がモヤモヤ。
違う人に見せる、知らない顔に胸が締め付けられて、
自分では無い誰かを愛していると思うと、勝手に涙が流れた。
ある日、あなたが愛おしそうに腕に抱くのを見て気づいた。
ようやく気づいた気持ちは、遅すぎたのかな?
胸の締め付けが増し、耐えられないと勝手に涙が溢れた
嗚咽を抑えられなくて。
私とあなたの瞳が交差した。
驚愕、焦りに見開く瞳に耐えられなくて、
言い訳をしようにも、言葉が喉に詰まって出てこない。
もうダメと思い背を向けて駆け出した。
周りがザワザワをこちらを振り向いても、
後ろからあなたの声が聞こえても、
足を止められなくて、止めたくもなくて走り続けた。
次に顔を合わせた時にどうしよう?
もう一緒にいることさえできなくなりそうで、
堪らなかった。
息が切れて、足を止めた。
涙はまだ枯れること知らず、流れ続いている。
足に力も入らなくなり、力無くその場に蹲る。
声もなく、築いた愛おしさと先ほど見た姿に苛まれて。
何時間経っただろう?
すでに日は暮れて星空が見えるだろう。
瞼は晴れていて、熱を持っている。
しかし、いまだに涙が流れている。
帰ろうと立ち上がり、歩き出そうとした時、
ドンと後ろからキツく抱きしめられた。
何事かわからず戸惑っていると、愛おしい香りがした。
「やっと、見つけた」
あなたの声が届いたのと同時に、さらに涙が流れて
「離して」といっても、腕の力は増すばかりで。
震える声で、「何で」「あなたにはすでに他のひとが」
と言ったら、
「そんな人はいない、俺には…」と言って私を自分の方に向けて、さらにに抱き寄せられる。
腫れた目を労うようにキスをして、抱き寄せられたまま頭をまるで壊れもののように撫でられる。
耳から聞こえるその鼓動の速さが全てのこたのように思えた。
「愛してる」と言ったら、その腕の強さはまし、
キスが落とされる。
言葉はいらない…ただその優しいキスが答えだった。

8/29/2023, 5:30:19 PM