▶71.「未来への鍵」
70.「星のかけら」
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1.「永遠に」近い時を生きる人形✕✕✕
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どの国も、最初は平和だった。
国民は働き者で実りも良かった。
のんびりと発展していけばいい、そんな長閑な雰囲気があった。
技術者たちが好きにできていたのは、そのせいかもしれない。
人間の友が欲しかったフランタ国の技術者は自ら考える機械を作り出した。
イレフスト国の技術者は勤勉家で様々な不思議に挑み、やがて技術の転用と小型化を得意とするようになった。
サボウム国の技術者は人体の限界を押し上げることに夢中だった。それは体に手を加える技術、心に影響を及ぼす技術へと発展していった。
しかし、純粋だったはずの向上心は、人の闇に呑まれた。
それは野心を生み出し、野心は疑心を生み、
そして戦乱へと進んでいった。
〜人形たちの知らない物語〜
サボウム国王城、裏口にて
「これが、『ワルツ』か」
「そうだ」
____が出発する間際になって、やっと渡された手のひら大の機械。
禍々しい紋様が彫られている。しかし宝石のようなものが散りばめられているので、出処さえ知らなければ美しい宝物に見えなくもない。
王に呼び出された後、身支度と称した人体改造により、____の見た目はイレフスト人に多い容姿になっている。特に指紋の変わりようは見事という他ない。
「効果は?」
「知る必要はない、との仰せだ。お前はイレフスト国の王城に行き、見つからぬ場所に置くなり埋めるなりすれば、それでいい」
「そうか」
「では、あー…」
と、ここまで居丈高に話していた方が姿勢を崩し、
チラチラと周りを窺い始めた。
「こら、近くにはいない。大丈夫だから」
それを見て____は小声で、暗に姿勢を崩すなと注意を促す。
「そうか。『それ』な、一定条件を満たした者に強い催眠を掛ける効果があるらしい。いけるか?」
「おや、私を見くびってもらっては困るね。そっちこそ、すり替え。しくじるなよ」
「おう。コホン…では行け」
____は城に背を向け歩き出した。
「これが未来への鍵、ね…」
知らず、皮肉げな笑みが浮かんだ。
あの国王にはバラ色の未来しか見えてないんだろうな。
だが、悪いな。
私たちの未来への鍵として使わせてもらう。
1/11/2025, 7:14:27 AM