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帰り道。最近できた大きな二世帯住宅。
その家からはどこか懐かしい香りがする。

どんな人が住んでいるんだろう。駅近にこんな大きな新築。二世帯ということは親の出資なのか…?
などと下世話なことを思うこともしばしば。

地元を離れ、友人も恋人もいない。噂話に興じるわけではないのだから考えるくらい許して欲しい。

俯き加減歩く帰り道、その家の木は間接照明で明るく照らされている。

歩を緩める。

横を過ぎる人の気配。黒い革靴がコツコツと音を立て、迷いなく進む。

彼が揺らした風に乗って、あの香りが鼻腔をくすぐった。
まさか。
僕はいつのまにか歩みを止めていた。

彼はあの家の前に立つと、スーツを整えインターホンに手を伸ばす。
その時ふと、僕の方を向いた。

目があう。時が止まったかのような間。
徐々に相手の目が見開かれた。

(テーマ:風に乗って)

4/29/2024, 10:46:00 AM