お題:繊細な花
それは、まるでマーガレットのようなその花は、とても細かい硝子細工だった。
俺達はいる、朽ち果てている部屋の中で、唯一朽ちていない、それどころかこのぼろぼろのこの小屋の中にある不釣り合いな真新しい木製のテーブルに、その花は乗っていた。埃が被った分厚いガラスケースの中に、その花はいけられている。ツタの合間から差し込む日の光をうけて、硝子細工の花はキラキラと輝いている。
「まさか、水晶花が存在していたとは」
「ああ、信じられないぜ」
俺たちは注意深く、テーブルの側に近づいた。
水晶花。
それは長い時を経たとあるエルフの手によって生み出された、この世界で一輪しかない花だという、伝説の花だ。
その花を探して、国中の好事家が大金をはたいて探し回っている。
俺たちはそんな好事家に依頼されて探検しているトレジャーハンターのコンビだ。
「持って帰ればとんでもない騒ぎになりそうだな」
「間違いなくな。どれだけの金が俺たちの懐に入るか」
俺たちは顔を見合わせて、にやりと笑う。
もしここが、この花を作ったエルフの小屋だとしたら、それを生み出したエルフの小屋にそっと飾られていたことになる。
俺たちはそれを持って帰ろうと、ガラスケースを持ち上げた。かぶせられていただけなのか、水晶の花が空気に触れる。
そよ、と流れた空気が水晶花の花びらを揺らすと、風に乗ってきらめく光の粒となり、部屋に溶けていった。
俺たちは、呆然とそれを見守った。
6/26/2023, 9:32:50 AM