みけねこ

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たった一つの希望
「君が、我々の唯一の希望なんだ」
雨が降らず、田畑は干からび、村は困窮していた。
とにかく、雨を降らせなければ・・・
そして、雨を降らせる龍神様に生贄として私を渡すことが決まった。
そのことを村長から聞かされた時、私が感じたのは
ー絶望でなく、喜びだった。
もともと、孤児で村に居場所はなく、村に迷惑をかけることをつらく思っていたのだ。
こんな私の犠牲で村が救われるのなら・・・

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「・・・やらぬ」 「えっ?!」
生贄として、龍神様の元に参ったその日。
雨を降らせてほしいと伝えると、龍神様はすぐに断ってきた。理由を尋ねると、こう返してきた。
「あの村は昔から雨が降りにくい。こんな日照りも経験している。日照り対策をとっているだろう。お前が生まれる前の話だが、これくらいの日照りの時でも村は滅びず、生贄も出さなかった」
「そんな、では、私だけが希望だと言うのは」
「そんなことを言われたか、それは嘘だ。体のいい厄介払いをしたかっただけだろう」
嘘だったの?私が希望になれるならと思って、生贄になったのに?いなくなっても良かったの?
見捨てられた悲しみにくれていると、龍神様が声を掛けてきた。
「・・・哀れな娘、お前に免じて雨を降らせてやろう。
だが生贄は必要ない。お前は好きに生きろ」
「・・・私は希望を持っても良いのですか?」
「希望が無ければ生きられぬ。持って良いのだ」

希望を持ってず、村から唯一の希望だと騙されて龍神様の元にやってきた娘は、龍神様に説かれて自分自身の希望を持つ。その後、娘は龍神様の元に押しかけ女房として居座り、龍神様と夫婦となり、子を産み、末永く幸せに暮らしたそうな・・・

3/2/2024, 11:34:09 AM