黒山 治郎

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暑い夏に解けゆく氷のようだった。

放課後、夕暮れに染まる教室に
取り残された君が楽しげに歌う
その耳馴染んだ懐かしい童謡は
脆く儚いシャボン玉の姿を描く

高い音が心地好く耳へ届く度に
君も弾けて消えてしまいそうで
どうにかして留めておきたくて

その透明な声に色を混ぜる様に
僕は君へ声を掛けてしまった。

「懐かしい曲だね」

聞かれた事へ色付いた君の頬に
僕は人知れず胸を撫でて安堵し
それまで思考の外に放っておいた
夕焼けの空を、漸く思い出していた。
                   ー 透明 ー

5/21/2024, 2:46:25 PM