-いと-

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学校の屋上に立ち、街を眺める。建物から漏れ出る光は何度見ても同じ。つまらなすぎる。毎日同じ日の繰り返し。生きている意味なんて無い。今日こそ、ここから飛び降りたい。フェンスを越え、落ちるか落ちないかのギリギリのところに立つ。
「何してるの?」
声が聞こえた。こんな時間に自分以外の人が学校にいるわけない。自分は不法侵入なのだが…。
「話聞いてる?君はここで何をしているの?」
「なっ、何もしてないし!」
また失敗した。誰かに見つかった。でも、その声に聞き覚えがない。ふわっとした優しい声。聞く人を包み込むような温かさ。なぜかまた聞きたくなった。

すべてが正反対の兄。勉強もスポーツも万能。そんな兄が小さい頃から羨ましかった。しかし、いつしか家族は変わっていった…。両親は完璧を押し付けてくる。分からないところを聞いただけで怒られる。殴ってくる。兄には見捨てられた。俺には関係ないとでもいうかのように。家族との衝突が増え、心も体もボロボロになっていった。こんな毎日なんて嫌。
ある日の夜、家族が寝静まる頃、こっそりと家を抜け出した。行き先は取り敢えず学校。1晩だけでもいいから落ち着くところに居たかった。非常階段を使い、学校に入った。日中よく行く学校の屋上。夜には行ったことがない。階段を登り、扉を開ける。そこには動く人影があった。身長や体格からして、不登校気味のあいつだろう。
「君、何してるの?」
相手はビクッとなった。自分1人しかいないと思っていたのだろう。
「なっ、何もしてないし!」
相手は自分の横を通り過ぎ、逃げていった。話せるチャンスだったのに…。自分で逃してしまった。たった1日で振られたようなものだ。でも、あいつには会えそうにない。すべてを諦めるため、屋上のギリギリに立ち、目を閉じ、体を前に預けた。

※フィクション
【お題:恋物語】

5/19/2024, 12:46:13 AM