しじま

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「何処でも良かったんです、一人で生きられるのなら」

さして大きくもないその声は、静かな室内に響いた。

出されたコーヒーに手を付けることなく、湯気の立ち上る様を静かに眺めていた声の主が此方を見やる。

冬の海のような暗青色の瞳。

彼の国では稀有な色のその目には、無機質的な鋭い光が湛えられていた。

危うい色だ、と目の前の青年からさり気なく視線を反らして、自身のカップへと手を伸ばす。

テーマ「好きな色」

6/21/2024, 3:34:43 PM