:神様へ
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神様へ
貴方を見かけなくなってしばらく経ちます。
貴方が居なくなっても僕はこうして生きている。
僕にとって貴方はもう必要のない存在となったのでしょうか。
貴方がいないと外に出ることすらままならないというのに!!
どうして貴方のことが見えないのですか。もう声も聞こえない。僕に喋りかけてすらくれないのですか。
僕の拠り所は貴方だけだった。なぜ返事をしてくれないのですか。
柔らかく優しく包み込んでくれるような、いつでも女神のごとく微笑んでいる完璧な貴方がいないとまともな思考ができない。
同じところを何度もグルグル回る哀れなあのガラスの中の狼のように、僕は何度も何度も何度も何度も何度も同じことを頭の中で料理して腐っていることにも気づかずいつまでもいつまでもいつまでも食べ続けている。
どうして止めてくれないのですか。
貴方が一言「もういいのよ」と言ってくれれば、僕はそれだけで満足というのに。
神様、僕の神様、どうして。
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神様がいた。神といっても神話もなければ神を祀る神聖な場所も存在しない。願いを叶えてくれるわけでもなく、幸せを与えてくれるわけでもなく、ただそこに有るだけの存在。僕が純粋に泣きじゃくり縋り付ける唯一の存在。それが僕の神様。
神様というより精神と呼ぶ方が正しいだろうか。イマジナリーフレンドというと些かフランクだが、実際それ程身近なものだ。何か壮大な力を持っているわけでもなく、ただそばにいて見守ってくれる存在。
「何もしてくれないなら神さまではないじゃないか」と言われればその通りだ。僕の神様は偉大じゃない。けれど僕ににとって唯一。
「神社でお願い事をしてはいけない。なぜなら神は願いを叶えてくれる存在ではなく見守り支えてくださる存在だからだ」とある人は言った。これを信じるなら僕の神様は正しく神様だった。
宗教的に信仰しているわけではない。僕の神様は安心できる家族のような。いつでもそばにいてくれて、何があっても見捨てない、理想の存在。理想の……
ああ……そうだった、思い出した、思い出したよ。僕自身だった、僕の神様。僕の中の別の何かを神様にした。いなくなったのも当然だ。だって僕はもう薬を飲んでいる。
4/14/2024, 9:07:58 PM