遺跡のクリスタルの床を
コツコツと歩く少女は
どこからともなくピアノを見つけ
身体を操られているかのように
スラスラと弾いていく。
そこには
優雅さがあったが
どこか悲しみもあった。
たった一人で
故郷へ戻ってきたかのような。
しかし少女は
枯れることのできない花。
そう、不死身。
少女は、
不死身の身体を治すために
永遠の命を捨てるために
故郷を出たが、
方法が見つからず
戻ってきたのだ。
戻ってきた頃には
200年ほど経っていて
故郷は
家族や友人はもちろん、
人一人いない静かな所となっていた。
大昔からある、
遺跡と合体している教会では
屋根は崩れ、
ツタや苔が好き放題生え、
ピアノだけを残して
遺跡となっていた。
雨が降ってもお構い無しに
少女は弾き続ける。
このまま
命が尽きればいいと思った。
このまま
自堕落にいたらいいと思った。
だってもう
少女の名前を知る者も
少女より年上の者もいないのだから。
悲しくても
涙は流れてこない。
私はまだ
誰かに涙を拭って欲しかったのに。
そう訴えるかのように
ピアノが弱く
ゆっくりになる。
いやまだ負けちゃダメだ。
対抗するように
ピアノが力強く
高い音と低い音を使い分けていく。
あと何百年、いや1000年経っても
きっとまだ少女の命は尽きない。
"Good Midnight!"
次はどこへ行けばいいのだろう。
どこを目指せばいいのだろう。
寂しげな目をする少女は
7時間迷走するピアノを弾き続けた。
7/2/2025, 3:48:53 PM