丘の上にある粉挽小屋にはチルチルおばさんと、1匹のロバが暮らしています。
おばさんもロバも太陽が昇る前に起き出して、ロバが粉を挽き、おばさんがその粉を捏ねてパンを焼きます。
晴れの日も雨の日も、はたまた風の強い嵐の日も、毎朝変わらずにパンを焼いています。
出来上がったパンは村のみんなの朝ごはん。丘の上から漂ってくる美味しい香りでみんな目を覚まします。
「おばさんのパンの美味しそうな香りがするぞ!」
「今日もきっと美味しいぞ!」
みんなおばさんのパンを毎日楽しみにして、丘の上からチルチルおばさんがやって来るのを楽しみにしています。
毎朝おばさんが持って来るパンは、いつも変わらず美味しくて、みんな大好きでした。
「どうやったらこんなに美味しく焼けるんだろう、コツでもあるのかい?」
ある時誰ががおばさんに尋ねました。
「コツなんてないの。ただみんなと『美味しい』を分け合えるのが嬉しいと私が思っているだけ。」
「一緒に誰かと何かを分け合える。それがとても美味しく感じられる秘密なの。」
それはいつも通りの、ある寒い冬の日の事でした。
2024.12.18「冬は一緒に」
12/18/2024, 4:25:38 PM