マスカット姫

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『羅針盤』

 私は最近、ふと思う。

 人生の羅針盤という言葉がある。あるはずだ。人生において進むべき道を教えてくれるもの。物理的にあるものではない。恐らくは心のなかにでもあるのだろう。

 こんな書き方をしているのは、私には人生の羅針盤がないからだ。当然である。何をするのか、何になりたいのか、どうなりたいのか。これっぽっちも分からない。お先真っ暗だ。

 羅針盤を持つ人々はきっと、お先真っ暗な中で進むべき方向が何となくわかるのだろう。羅針盤とは本来そういう物のはずだ。なんとも羨ましい。

 私という人間は、苦手な物はあまりないが過敏に反応してしまう嫌いな物が多すぎて、出来ることが少ない。やりたいことは多いが、どれも何処かで嫌いにぶち当たる。それ故、進路を定めることができずにいる。

 まあ、深く考える必要はないのかもしれない。羅針盤なんて無くても、この世界は人だらけでどこにでも場所がある。これは父の言葉だが、「基本的に生きていくことくらいはどうとでもなる」そうだ。

 つまり、羅針盤が必要なのはそれより上を目指す場合だ。私なんか、普通に生きようとすれば精神的に参ってしまうので、やはり世間の『普通』とはズレた生き方をしたい。となると、結局のところ私には羅針盤が必要だと言う話になる。

 なかなか難しい世界だ。今の時代、普通から逸れた者にも楽しく生きる術はあるのだろう。だが、そこにたどり着くまでに必要になるものが多すぎる。人生の羅針盤を見つけ出し、それに従って努力を続けて進み、それでも辿り着けなかったりする。運要素も強い。正直なところ、やってらんない。

 楽しく生きたいだけなんだけどなぁ……

1/21/2025, 11:47:21 AM