未知亜

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「いい匂いがするでしょ〜?」
玄関先で君が花瓶を指す。
「知ってる? もっといい匂いにする方法」
サンダルを半端につっかけて君が身を乗り出す。
「こうやって吸い込むでしょ」
形の良い鼻が黄色や桃色に埋まる。
「それでちょっと浸って」
目を閉じた横顔が上を向く。
「それからまた嗅ぐっ!」
色彩に鼻が突っ込んでいく。
「こうするとね、よりしっかり感じられるんだって。なんかで読んだの」
「それ、ほんと?」
苦笑して靴を脱ごうとした私を君が押し返す。
「いいから、試してみなって」

その日はなかなか部屋に入れてもらえなかった。
君と出逢って、君の世界の切り取り方と出逢った。
口では永遠を誓いながらどこか嘘くさい気もしてた。
明日世界が終わるなら……それもいいなと思ってた。

『君と出逢って、』『明日世界が終わるなら……』

5/7/2026, 9:06:59 AM