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「高い場所の風は強いね。気を抜いたら落ちてしまいそうだ」

 独り言に答える声はない。君がいたらヒヤヒヤしながら俺を止めにくるけど君はもう夢の中にいる。
 業務が尽きず、気分転換で屋上へとやって来た。湿っぽい夜風を受けながら、防止策を乗り越えて角に立つ。この街は今日も賑やかだ。人の頭が米粒ほどで、それが少しずつ動いている。大通りは大渋滞していた。

 数多に輝く『星空の下』、建物の最上階から街を見下ろしているなんて正義のヒーローみたいじゃないか。どちらかといえば俺は正反対の存在だが、今は気取ってみてもいいだろう。
 この街にはかつてのヒーロー…人々から崇められた神はもう居ないんだから。

4/5/2023, 10:53:26 PM