《愛する、それ故に》
「大好きだから、なのかな……」
ある夏の日の夕暮れ時。俺(齋藤春輝)は家の近くの、でも誰も知らない森の中の古びたお堂に座ってぼんやりと夕焼けを見ながら呟く。
蒼戒と、世界で一番大切な双子の弟と、喧嘩した。
いや、正しくは俺が一方的に避けてるだけなんだけど。
数日前、友達に言われた。俺の存在が、蒼戒の邪魔になってるって。
わかってるつもりだった。俺がいるから、蒼戒は自由になれないって。俺がいるから、蒼戒はいつまでも過去に縛られたままなんだって。
でも、わかってなかった。俺が思っている以上に、俺はあいつにとって邪魔者で、俺の存在が蒼戒を苦しめてた。こんな、こんな残酷な話ねぇよな。
「だから……お別れだな、蒼戒」
だんだんと夕焼けが消えていく。空が闇に塗り替えられていく。
今日はこの町の花火大会。花火が終わったら、俺はここで首を吊る。
「愛する、それ故に、ってか……」
ポツリと呟いて、自嘲気味に笑う。
大好きだから、幸せになってほしいから。だから俺は、あいつのそばから、離れないと。
「バイバイ、蒼戒」
そう言った瞬間、太陽が沈みきって完全な闇夜が訪れた。
(終わり)
※なんかすっごい不穏な終わり方してる上に続きここでは書かないけどちゃんと生きてますので安心してください!
2025.10.8《愛する、それ故に》
10/9/2025, 9:22:33 AM