うめぼし

Open App

さわさわと秋の風に揺られるすすき畑が太陽に照らされて幻想的な光景が広がっている。数ヶ月前に帰ったばかりなのになんだかひどく懐かしく感じた。彼女と一緒に数ヶ月前に見たときはまだ緑だったすすきはきれいな赤褐色に染まっていた。

数ヶ月前、結婚の報告に来た両親に今日は婚約者の死を伝えに来た。

「穂乃香が死んだ。」
そんな、今世紀最大と言っていいほど最低最悪な報告を受けた。
飲酒運転だそうだ。
彼女の訃報を悲しむ間もなく慌ただしく葬式が行われた。彼女の両親が言うにはこういうのは早めに終わらせた方がいいらしい。分かってはいてもこの両親には心がないのかと憤りを感じていた。しかし、葬式の夜、誰もいなくなった会場で肩を寄せ合いすすり泣いている2人の姿を見て自分がどれだけ最低なことを思っていたのか思い知った。当たり前だ。自分の娘が死んで悲しくない親などいない。1番辛いのは遺族に決まっている。

彼女とは結婚を約束した仲だった。
お互い両親にも挨拶を済ましあとは結婚だけだっと言うのに。どうして、、
そんなどうしようもないことを考えながら彼女と来たすすき畑に突っ立っていた。
彼女の死を伝えた後だからか、彼女の死自体のせいかそれとも秋の哀愁の雰囲気のせいなのかただただ虚しく感じて呆然と1人、「すすき」を見ていた。

11/11/2023, 7:49:40 AM