「どう?似合うかな?」
真っ白なワンピースが夏の青空に映える。
くるくると回る彼女と一緒にスカートもふわりと舞う。
『うん、よく似合ってるよ』
俺はそう言って自慢の一眼レフを構える。
どんな一瞬も撮り過ごさないように。
レンズ越しの彼女は夏の日差しにも負けず輝いている。
そんな彼女を無我夢中で撮った。
あれから数年、彼女はもう居ない。
俺はカメラに残る写真をずっと消せずにいた。
『…本当に、似合ってるよ』
線香の匂いに包まれながら、窓の外を見る。
あの夏の日も、大きな入道雲が背景にあった気がする。
6/29/2023, 1:11:42 PM