終点
やってしまった。寝過ごした。
ガタンゴトンと、心地よいリズムで流れる揺れ。電車で眠たくなる人が多いのは、母親の腹の中にいた時の鼓動を感じさせるからだという。まぁ、電車で寝るのは、平和ぼけしている日本人くらいだろう。
とか澄ました顔で思ってた僕も、平和ぼけしていたらしい。すっかり終点だ。仕方がない、歩いて帰るしか無い。幸運にも、終点からまあ近い距離に友人の家がある。そこで泊まらせてもらおう。
ため息をつきながら、駅をあとにする。今日が、華の金曜日でよかった。じゃなきゃ、ストレスで潰れているところだ。
なにもないところだ。信号機や、標識、自営業の床屋の看板。なにもないから、懐かしく思える。これをエモいと言うのだろうか。こんな夜もいいな。
流石に終点はこりごりだけどな。
8/10/2023, 2:48:12 PM