川柳えむ

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 空の青さを詰め込んだビー玉のような目を光らせて、猫は獲物を狙っている。
 狙いを定め、後ろ足で思い切り地面を蹴って、飛びかかる。
 獲物はすんでのところで青い空へと飛び立ってしまった。
 青い目をした猫は、悔しそうに空を睨んだ。
 それでも猫は諦めない。諦めてはいけない。生きる為に。
 次の獲物に狙いを定め、飛び掛かる。また上手くいかなかった。
 近くにある人間の家にふらりと立ち寄ると、ご飯を出してくれた。勢いよく食べる。食べてすぐその場を立ち去る。

 次の日もまた、新しい獲物に狙いを定める。上手くいかなくても諦めない。生き残る為に獲物を狩る。
 人間がまたご飯を出してくれた。生きる為に食べる。
 人間がその様子を見て何か言っている。
「君の目はまるで地球みたいだね」

 青い青い目は、獲物の先の未来を見ている。一匹で生きていく為に、技術を磨く。
 その目が見る未来に、人間と一緒にいる姿は、今はまだ存在しない。そんな未来があることを、猫はまだ知らない。


『青い青い』

5/4/2025, 7:05:27 AM