湯船に浮かぶ柚子の香りが鼻腔を抜ける。入浴中にも関わらず、浮かぶのはあのひとのことばかり。「はぁ……」 小さく息を吐き出した。 わたしのことなど、なんとも想っていないくせに頭を撫でるのだ。けれどその手の重みは心地良く、心をそっと包み込まれてしまう。 ぶくぶく。口元で弾ける透明な粒たち。(……バカみたい) 想いを紡げる日は来ない。簡単に触れられて、ときめいてしまう心をどうにか出来たらいいのに。
12/22/2024, 12:50:18 PM