ラカロ

Open App

雲になりたい
そう言った君はどこへ行ったのだろうか
暖かくなり始め桜が咲き散り生命を感じる春
蝉が鳴き太陽が照りつける真夏
青々とした葉も赤く色付き涼しくなる秋
肌を突き刺す寒さと体感どんよりとした空の冬
その全ての季節で君は呟く
雲になりたい

最初はただの冗談かと思っていた
その言葉を話す時君は突然静かになる
でも何度もその言葉を聞くたびにそれが本当のことなんじゃないかって思ってしまった
でも少しするといつもの君に戻る
話すと微笑むように笑い、少しからかうとからかった分だけ少し怒ってまたすぐ笑顔に戻る
何もしていない時は澄ました顔で喋りかけるとキョトンと言う言葉が似合うほど間が抜けた顔になる
それがいつもの君
でもその言葉を話す時だけ、誰にも理解されない、誰も近寄らせない、そんな顔になってしまう
僕は救いたかったのかもしれない
僕はその言葉を叶えてあげたかったのかもしれない
本当は気づいていたんだ、その言葉の真意
雲になりたい
それはどこか遠くに行きたいと言う意味じゃなかったんだ

ある朝僕は君の表情が明らかに違うことに気づいてしまった
でも彼女は言った
「ゴミはどこに捨てればいい?」
その言葉は突き放すように発せられたのではなく
普通に聞くように、優しい声いつもと同じだった
でもその表情は、絶望という感情が読み取れるようなそんな顔だった
「裏に焼却炉があるよ」
言うべきでなかったかもしれない、でもその表情と声のギャップに何も考えず答えてしまった
答えてあげたかったのかもしれない
「ありがとう」
その言葉を残して彼女は焼却炉の方に向かって行った
ゴミも何も持たずに


5/20/2025, 3:34:10 PM