「あれぇ~、どこいったっけな……」
俺は“お手紙”を探していた。
とは言っても、本物の手紙ではなくて
学校から配布されたプリントのことだ。
小学生の頃から母に「お手紙出して」と
言われ続けたせいで、高校に入学した今でも
その癖は抜けていない。
「あっ。これかな」
俺は真っ黒なスポーツリュックの中から
くしゃくしゃになった紙の束を引っ張り出し、
その中から異様な雰囲気を放つ
“お手紙”を1枚、引っ張り出した。
両手で軽く紙についたシワを整える。
「はい、コレ。あったよ」
そう言って母親に“お手紙”を渡すと、
次の瞬間から俺の意識は飛んだ。
───そう、赤紙。
異様な雰囲気を放つ、真っ赤な紙。
俺は怒鳴り声をBGMにして、
たわいもない妄想に耽るなどしていた。
保育園時代仲良かったアイツ元気かな、とか。
「え?あぁ、あのお手紙?どこやったっけな…」
“お手紙”だけでなく、整理整頓が苦手なのも
小学生時代から変わっていない。
『手紙の行方』
2/18/2025, 8:59:27 PM